仁平典宏先生「世代論を読み直すために:社会・承認・自由」

仁平典宏先生「世代論を読み直すために:社会・承認・自由」(湯浅ほか編『若者と貧困』2009所収)を読みました。世代格差論への優れた要約、と新聞の書評欄で紹介されていたからですが、確かに、多くの情報を手際よく整理し、著者氏の主張も明快で、たいへん勉強になりました。
今の格差社会は、現代の若者がナサケナイせいなのか? それとも団塊の世代が世代的幸運で勝ち逃げしてしまったせいなのか? 著者氏は、そうした対立は不毛であると言います。
戦後の歴史を振り返ると、むしろ団塊以前の世代の頑張りによって、日本は後発近代化の国家として、例外的にめざましい発展を遂げたと言います。そしてそれは、大企業の正社員男性が一家を支え持ち家を買うという、ごく一部の人のライフスタイルを標準とする「日本型生活保障レジーム」によるものでした。
しかし1980年代でそうした時代は終わりを迎え、遅れたネオリベラリズムの時代がやってきます。旧来のシステムはもはや金属疲労を起こしているのに、若い世代はそれでも生活の安定のために、少ないパイを競争的に求めるのです。団塊の世代は、体制やムラという旧来の秩序の解体に喜びを見いだせたかもしれませんが、若い世代にとっては、既成秩序の崩壊はもはやデフォルトで、運と偶然性に左右される個人化した社会はさらに進化しています。
社会という言葉には、恵まれた人とそうでない人とをともに包摂するという福祉的な意味合いと、社会に対して負荷をかけてはいけないんだという自己責任論的な意味合いの2つが表裏一体であったと著者氏は言います。
結論としては明確で、日本でも社会保障社会福祉を拡充し、大企業正社員的なライフスタイルのみを標準とするような社会モデルの相対化を推奨しています。

若者と貧困(若者の希望と社会3)

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