森本あんり先生『宗教国家アメリカのふしぎな論理』

反知性主義や「富と成功の福音」にまみれたアメリカという国の宗教性について、現代的な情報も盛り込んで、わかりやすく語った本です。個人的に2017年ナンバーワン新書ですね。
あんり先生は、私が大学在学中に大学教会牧師に着任された先生で(先生は覚えてらっしゃらないかもですが)教会のリトリートなどでも一緒に議論してくださった記憶があります。
トランプはアメリカの歴史で例外的な存在ではなく、似たような現象は過去にも多くあったことなども主張されています。
トランプに関しても、原罪を軽視し、自己万能感に浸るペラギウス主義的な姿勢だと解釈されています(そこだけ少しわかりにくかったです)。
おそらく「反知性主義的なアメリカニズム」の対極にあるのは、まさに(原罪を強調する)アメリカの知識人的なキリスト教理念なのであり、あんり先生は暗に後者の立場から批判的に論じているのですが、この新書ではそこまでは明示されていませんね。そこを注意しないと、なんだかキリスト教DISのように読めてしまうかもしれません。
言い換えれば、
・現在のアメリカは宗教国家なのか?
・もし宗教国家だとすると、それを支えるキリスト教は、もはや「そういう宗教」(反知性主義的で自我拡大的)だと考えて良いのか?
・逆にもし今の状態が「キリスト教から離れた、堕落した世俗的状態」であるなら、なぜ題名が「世俗国家アメリカの不思議な論理」ではないのか?
と言う疑問を持つ読者も居るのではないかと思いました。