『宗教と社会』最新号は興味深い。

小生も所属している<「宗教と社会」学会>発行の学術誌『宗教と社会』第14号が刊行されました(所蔵している大学図書館などで読めます。ただし、入庫までは少々時間がかかるかもしれません)。
昨年の同学会のテーマセッション(自主シンポジウムみたいなもの)の報告もあったのですが、その中で、異例ともいうべき内容のものがありました。
現代仏教についてのテーマセッションで、ある研究者が批判されたそうです。彼は、今のお坊さんたちと一緒に、現代仏教を革新すべく活動されている方です。
実はその方も「宗教と社会」学会会員で、かつそのテーマセッション会場に(聴衆として)居たのですが、いつまでたっても発言の機会がまわって来ず、最後の数分になってようやく、しかも非常に抑圧的な仕方で、不十分な応答しかさせてもらえなかったとのこと。
その彼が、同誌最新号に、異例の反論文を寄稿するという展開になりました。
当該テーマセッション登壇者からの再応答も載っていて、なかなか読み応えがあります。
そのやりとりはまるで、ある仲間意識が別の仲間意識を批判しているような、そんな展開にもなっていました。少し引用します。
団塊の世代…同じような世代の人たちが、この分野に限らず、様々な分野で新しい学会を形成した時期がありました。それは、旧来の学界の権威からの脱却でもあり、また、学際という言葉がはやったように、学界の枠組みを超えたり、あるいは連携を図った学会も設立されました。しかし、こうして作られていった新しい波もまた過去の権威の再生産でしかなかったような気がしています。これを私は『ぼくたちの学会』と呼んでいます…仏教再生の運動…を総括してみせる…手法は、まさに『ぼくたちの学会』の理想を思い起こさせるのであり、私はそこの所を批判しているのです」(『宗教と社会』第14号, pp.276-277)
いろいろと考えさせられるやりとりではあります。
私としては、様々な立場の声ができるだけ等しく響く議論こそが、学会には望まれると思います。