エヴァ・イロウズ『冷たい親密性:感情資本主義の形成』Cold Intimacies: The Making of Emotional Capitalism by Eva Illouz, 2007[2016.7.11改訂追記]
を現在大学院ゼミで読んでいます。(参加に興味ある方はご連絡ください)
イスラエル在住の社会学者(女性)だそうです。
Cold Intimacies: The Making of Emotional Capitalism
- 作者: Eva Illouz
- 出版社/メーカー: Polity
- 発売日: 2006/12/25
- メディア: ペーパーバック
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1章では、心理主義の広がりに対して、企業的な文脈における「コミュニケーション活用」論理が、ひとつの時代精神となってきたこと;心理主義とフェミニズムとの微妙な連携によって、性的解放と精神的健康が重要なテーマとして確立したこと、などを述べています。
2章では、フロイトに由来するトラウマ・ナラティブと、ロジャーズ、マズローらの自己実現ナラティブとの競合・融和・定着を述べ、セラピー的精神はもはや「感情資本」「感情ハビトゥス」ですらあると分析しています…
3章では、オンラインマッチング(出会い)サービスは、心理学と消費主義が交錯する場であり、希少性にこそ価値があったロマンティック概念を塗り替えてしまうほどだ、と述べています。しかし主観で自己を再構築するものの、プロフィール写真では身体性が関わってくる…ネット出会いでの失望は、ロマンスが結局のところ、身体的直観に基づくものだからだ、と。
結論部では、心理学によって公私の境界はあいまいになり、自己実現や感情生活こそが道具的理性にとってのコンパスとなる…全体として、経済的な損得感情と[ネットなどでの]自己幻想を調停するツールが心理学的言説である、と示唆しているようです。
ざっと読んだ感想は3つあって、(1)全体にセラピーの側の宣伝する効用を額面どおりに受け取りすぎですね。(2)既存の議論とかなりの程度重なってます。が、英文の社会学の単行本レベルで、ある程度理論面も補強しながら論じているのは助かりますし、一定の功績かもしれません。(3)やはり1980年代に、セラピーは功利主義と表現主義の両方に基づいている、と喝破したベラーらは天才ですね。
心理学だけで職場が上手く行ったら世話ないよ(笑)、と思う反面、全ての人の発言がいったんは共有されるような仕組み・場が職場にあったら良いなあ、とも思いますね。心理主義をディシプリン装置だ現状維持だと批判する前に、日本のブラックな職場は、そもそももう少し基本的なレベルで「解放」されるべきなのかもしれないですよね。
ビートルズ以前の音楽? バンバンバザール たをやめオルケスタ ジプシーヴァガボンズほか
東京ライブハウスシーンに興味をもって久しいわたくしですが、バンバンバザールや、ジプシーヴァガボンズなど、スウィング、ジャズ、ビッグバンドを(時に日本語詞で)演奏する現代日本のインディースアーティストに特に注目してきました。
いろいろな解釈は可能でしょうけれども、私の見るところ、こうしたアーティストの皆さんの特徴をひとことでまとめるならば
「ビートルズ以降の音楽を聴いて育った世代が、ビートルズ以前のポピュラー音楽に回帰している」
ということかもしれません。
おおよそ、今のポピュラー音楽は、突き詰めれば1978年ごろのディスコに行き着き、さらにさかのぼると、1920-50年代のジャズ、スウィング、ビッグバンドなどに行き着く、そんな印象を持っています。後者はいわばポピュラー音楽の基礎となったものであり、ポピュラー音楽の楽しさの原点です。それは、誰が聴いても楽しめ、演奏しやすく、どこか懐かしい音楽を聴いている気分になれる、そんなものだと思うのです。
加藤有希子先生『カラーセラピーと高度消費社会の信仰:ニューエイジ、スピリチュアル、自己啓発とは何か?』
本日、この本が職場に届いていました。
カラーセラピーと高度消費社会の信仰~ニューエイジ、スピリチュアル、自己啓発とは何か?~
- 作者: 加藤有希子
- 出版社/メーカー: サンガ
- 発売日: 2015/09/26
- メディア: 単行本
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拙著にも脚註で言及いただき恐縮です。
これからじっくり勉強させていただきます!
Act of God ブロードウェイ ジム・パーソンズ主演
ジム・パーソンズ(『ビッグバン★セオリー』)主演のブロードウェイ劇 Act of Godを先月観ました。【以下少々ネタバレ】
全知全能の(ユダヤキリスト教系とおぼしき)神が、人間たちに新しい十戒を示すという内容のコメディ。
「God Bless America? 何をblessするのか、君が決めないでくれ!」
(世界にはなぜ不正がはびこってるの?)
「神は不思議な仕方で働くんだよ…」
やがて神は自分が嫉妬深い殺戮者でもあり、そんな自分に似せて人を作ったのだと開き直ります。
しかし最後には、天国にやってきたばかりのスティーブ・ジョブズの協力で「UNIVERSE 2.0」をローンチする、と宣言。そこは、良い人は必ず報われ、悪い人は必ず罰せられ、死ぬこともない理想の世界だと言うのですが…
英語学習者にとってはなかなかチャレンジングな聞き取りの連続でしたが、観てよかったと思いました。
(ヴィレッジヴォイス紙の若干辛口の評価は下記に)
http://www.villagevoice.com/arts/the-twitter-based-comedy-an-act-of-god-isnt-all-that-funny-7208079
セラピー文化の社会学
小生の本で読書会を開催してくださったそうです。ありがとうございます!
https://twitter.com/c_dokusho/status/473766287290540033