岡本亮輔先生著『聖地と祈りの宗教社会学』

聖地と祈りの宗教社会学―巡礼ツーリズムが生み出す共同性

聖地と祈りの宗教社会学―巡礼ツーリズムが生み出す共同性

ひとこと! これは十年に一度の名著です。
現代宗教は「世俗化論」でも「宗教復興論」でもその姿を完全にはとらえきれず、筆者氏はその文化・国における文脈依存的な状況の中で、新たな宗教性が再帰的に構築されてゆくプロセスに着目しています。
ざっと見た読後感としては、個人主義の限界と、コミュニケーションの新たなかたち、というあたりにこの研究の新しさがあるような気がしました。過去の宗教社会学の議論によく目配りしながら、それを現代社会論を下敷きにしつつ乗り越え、かつ理論面と実証面の両方を兼ね備えた、希有な研究であると言えましょう。
特に、世俗化論と宗教復興論で引き裂かれているこのジャンルに、第三の視座を示したのは、非常に、もどかしいものをすっきりさせてくれた感がありました。
1979年生まれの岡本さんによる、きわめて挑戦的かつ説得的な一冊だと思いました。宗教社会学の若い世代は有望です!