ライファーズ

アメリ終身刑受刑者の更生・セラピープログラムを取材した日本人監督によるドキュメンタリー「ライファーズ」上映会に行ってきました。LIFERSというのは、終身刑受刑者(Sentenced to LIFE)のことです。

フィルムは、カリフォルニアの刑務所における、アミティという更生プログラムの様子を主に撮っています。
アミティは、いわばNGO組織ですが、刑務所内にトレーラーがあり、元服役者がセラピストとなって、一生牢獄につながれた人々に救いの手をさしのべています。

基本は一種の心理療法であり自助グループなので、おなじみの、イスに座って輪になって語り合ったり、特定の「お題」を出されてみんなの前で発表したりします。このプログラムは、アリス・ミラーのトラウマ論に理論的には基づいています。
アメリカのバスドライバーの運転手のような「水色えり付きシャツに紺ズボン」こそ受刑者らしいですが、中には殺人を冒したとは思えない容貌の人も居ます。

グループセッションではまず、あるメンバーに対してみんなで「彼の良いところ」を指摘してあげたりします。
そして、人は自分が安心できる場所「サンクチュアリ」があるはずだと説き、あなたはサンクチュアリが奪われてきたはずだ、という流れになります。
そして、ほとんどの犯罪者は、幼児期や子どもの頃、多くは身近な人から虐待を受けた経験を語り出します。その秘密を告白することで、受刑者達に連帯感が生まれます。
そして、つらい過去を乗り越え、これからはもっと他者に貢献しようということを促します…

仮釈放すらされない貧しいヒスパニック受刑者の両親の今を取材しているシーンもありました。

「[終身刑になった]息子が[もっと若い頃]母の日に花を買ってきたことをいつも思い出す。あの子は、道の花を摘んで新聞紙を買ってそれで包んでくれた。わたしの人生最高の日だ」

どことも変わらない家族の光景なのです。

全体の感想ですが、まずは通常、秘密を守る意味でまず撮影されない自助グループの中身を、かなり詳細にフィルムに収めていることは、世界的に見ても貴重だと思いました。

内容的については「最悪の絶望を経験した人は、社会からサポートも受けられるのだな」とも感じました。
しかしながら、自助グループに行くほどではない、しかし日々問題や、傷つき体験を抱えている一般の人々は、どこにサンクチュアリを求められるのだろうか? とは思いましたね。

自分の安全な場所はどこだろう?

自分の行動を決定している「過去の心の傷は何だろう?」

それは、人間全員に共通した問いなのかもしれません。