感謝ソングという遺産。

NHK教育「ソングライターズ」、司会佐野元春、ゲスト降谷建志(Dragon Ash)の公開収録を観覧しました。
これは、佐野元春が、詩に焦点をあて、活躍中のミュージシャンにインタビューをするという、6人12回シリーズ(の最終回)です。
http://www.nhk.or.jp/songs/song-w/

お二人は1998年、佐野元春による新人発掘イベント「THIS」にDragon Ashが出演して以来の付き合いだそうです。
そのころ、ちょうど「陽はまたのぼりくりかえす」で、ブレイクする直前のDA。
実は私もそのイベントを観に行っていたのですが、その時の衝撃は今でも忘れられません。
その後、Grateful DaysやアルバムViva La Revolution、そしてZeebraを迎えての横浜アリーナ公演に至るまでは、本当に、血気盛んな青年が一気にスターダムにのしあがった希有な過程でした。
同時期に始まったROCK IN JAPAN FES.でも毎回のようにトリをつとめ、メジャーとマイナー、ロックとヒップホップを橋渡しし、シーンを牽引する存在だったと思います。

降谷さんが地上波のテレビに出演するのもかなり珍しいことですが、長時間のテレビインタビュー収録に応じることもおそらく初めてなのではないでしょうか。
どこか「やんちゃ坊主」ふうだった面影も残しながら、30歳、かつ父にもなった彼が、意外にじっくりと考えながら受け答えする姿も印象的でした。

収録中、Dragon Ashの功績・影響にも話は及び、プラス面、マイナス面、両方あったと言っていました。特に、曲作りのスタイルがインスタントになっていってしまい「感謝」を歌っていればそれで良しとするような、そんな風潮も作り出してしまったかもしれない、とのこと。確かに現在、リップスライムもどき、ケツメイシもどきの「感謝ソング」があまりに大量生産されているとは言えるかもしれません。

また、その場に集まった大学生を中心とした聴衆の質問にもキチンと答えていました。
バンド名の謎については、dragged on(だらだらする)がDragonになり、語感が良いのでAshを付け、特にバンド名にそれ以上の意味はないとのこと。

よく歌詞に出てくる「百合」は、花言葉のとおり、音楽に対する取り組みがピュアであるということの象徴だそうです。

また、3ピースバンドでニルヴァーナ風パンクだった頃から(その時代が好きだとの声は今でも一部にあります)、どうして変わっていったのかとの質問に対しては、まだ若かったのでやってみたいことが次々と出てきたということや、当時の荒削りな曲を聴くと、今は技術を身につけたぶん失ったものもあったかもしれない、ということをストレートに語っていました。


ロックというものは、青春やユーモアがテーマになりやすく、時に、10代でないと作れない荒削りな勢いが、その欠かせない魅力だったりします。Dragon Ashの功績の評価や、そうしたロックミュージシャンの成長について、まさに自分が聞いてみたいと思っていた話をぜんぶ聞けた気がしました。

と同時に、普段ロジカルにものを考える訓練をしている学生さん達にとっては、情緒面や感性の面での、素晴らしい学びになっただろうと思いました。大学キャンパスは、こうした講演会などによって、常に若い人たちに刺激を与える場所であってほしいと切に思っています。