信田さよ子さん@「宗教と社会」学会

先頃「宗教と社会」学会大会が開かれました。個人発表、テーマセッションが多数おこなわれ、充実した2日間となりました。小生も寄稿している『カルトとスピリチュアリティ』の書評セッションも、葛西賢太先生のコーディネイトにより開催されました。

また、たいへん興味深かったのが「民衆宗教とジェンダー」を問うテーマセッションでした。ほとんど、組織のもつ権力性、暴力性についての話に展開してゆきました。

ゲストとして信田「アダルト・チルドレン完全理解」さよ子さんが、概略、次のようなことを語っておられました。

男性中心主義の精神科医療に対抗して、私はアディクション・アプローチのカウンセリングをおこなっている。
それは、家族という視点を持ち込み、本人だけではなく家族も変わらなければならないと考えるものだ。
家族という場は、家父長制的であり、個人にとって暴力的になりうる。
森田療法では「あるがまま」であれと言うが、それは間違っている。
あるがままを実践する場は家族ではなく、セルフヘルプグループであるべきだ。

新自由主義の牙城でもあるアメリカで、セルフヘルプグループはカウンターカルチャーとして生まれた。
それは、自己の無力さを自覚し、自我の消滅を志向するものであり、当事者同士のつながりは、カウンセラーでは太刀打ちできないほどの救済をもたらす。
こうしたアプローチが時に宗教的であるのは偶然ではない。

唯一安全な「性」の場が家族であるなら[そうした関係性は抑圧的なものになるため]暴力はその当然の帰結である・・・


2002年頃、アダルトチルドレンのことを勉強している時、多い時は毎週のように私は信田先生の講演会や講座に行っていました。
とても懐かしい気がするのと同時に、主張がよりクリアーに、よりパワフルになっていると思いました。

最も身近な親密性の場であるはずの家族でトラウマを受けてしまった人々が、社会構造のもつ権力性に気づき、それを乗り越えるために新たな組織のあり方を生み出した、それがセルフヘルプグループなのかもしれません。そこには、既成の権威を批判する対抗文化の精神は[おそらくは間接的にと言うべきでしょうが]確かに息づいています。

アダルト・チルドレンという物語 (文春文庫)

アダルト・チルドレンという物語 (文春文庫)