宗教・カルト・アヘン

オウム事件以降、宗教研究者はあまり評価されていないかもしれません。
宗教研究は、宗教に現代的価値を見出そうとする。
しかし世間は、「危険な宗教」に警鐘を鳴らそうとする。
相対化する視点を学ぶのは、大学においてとても重要なことです。
エスタブリッシュされた考え方も、歴史的に構築されたものにすぎない。
自文化からみればフィクションでも、ある特定の文脈では、社会的意味や機能がある。
私はそうした見方に開眼させられましたし、だからこそ研究者をやっているとも言えます。
ですが、社会問題の緊急性の前では、そんな悠長なことを言っていられない時もある。
大槻ケンヂさんは、「UFOがインチキというなら、キリスト教や仏教の言い伝えだっておかしいはず」という趣旨のことを述べていました。
いっけん荒唐無稽に見える信念でも、それを信奉する人たちのあいだでは立派なリアリティである。そう考えなければ、諸宗教の研究というのはムリです。
しかし、宗教の真偽性を保留する態度が、しばしば「カルト」の「虚偽性」を「擁護」する態度に受け取られてしまう事もあります。
宗教は、批判する者にとってはアヘンかもしれない。
宗教は、いつの時代でも調和というよりは紛争を引き起こしてきたのかもしれない。
しかし、それがなければ、人類の文化の多くもありえなかったかもしれない。
この辺を、たかだか一学期などでお話しするのは、ほんとうにむつかしいですね。